ハンコ屋ちょこっと裏話 パート3 写りの悪いハンコ
『何回捺しても綺麗に捺せない... 捺し方が下手なのかな?』って思ってる方いらっしゃいますか?
それって捺し方の問題じゃないかもしれません。
はんこを綺麗に捺すためには、印面の平面である精度が大切なのです。
はんこを作製するには用意した印材に彫刻するわけですが、お客様のお手元に製品としてお届けされるまでの間に、
平面の精度が悪くなるポイントがいくつか存在します。
それらをちょっと挙げてみましょう。
まず、彫る担当の人が印材を入手します。
ほとんどの場合、印材として販売されている物を仕入れる事になると思います。
(まれに印材から作られる方もいらっしゃいます)
見た目では分かりにくいレベルですが、この時点ですでに印面は平らではありません。
ここから彫る人が平らに擦る(研磨)のです。
【とくさ】と呼ばれる紙やすりのような道具などを使用し、平らになるまで擦ります。
地味な作業ですが、とても大切な作業です。
「買ったばかりなのに全然写らない!」とゆう場合、ここの作業がきちんとされていない可能性が高いです。
地味な作業ではありますが、見ても分からないレベルで平らにするとゆう事は簡単ではありません。
そして荒彫りと呼ばれる、おおよその形を彫り上げる作業の後、もう一度擦ります。
「先ほど擦ったのになぜ?」と思うかもしれませんが、荒彫りの時に出来た細かい擦り傷やバリなどを取り去るためです。
文字の輪郭は何となく写ってるけど、線の中が写りが良くない場合、ここの作業がきちんとされていない可能性が高いです。
最終的に仕上げる《仕上げ彫り》を行う前に、落ちてしまった墨や朱墨を付け直します。
仕上げ彫りを行うにあたり、見やすくするためですね。
実はこの作業も平面を狂わせる原因に成り得る作業です。
せっかく平らに擦っても、付けた墨などが均一でないと台無しになってしまいます。
色を付けるだけの作業なので、見た目は簡単そうに感じるかもしれませんが、なかなか難しい作業です。
そして仕上げ彫りを行い完成となるわけです。
彫りはもちろんですが、今までの印面擦り・墨を付ける作業が全てきちんと行われて初めて《綺麗に捺せるはんこ》が出来上がります。
彫る時間だけでなく、綺麗な平面を作る印面調整の時間だけでもそれなりに時間がかかります。
手間と時間がかかっても、手を抜くわけにはいきません。
一見同じような物でも、細やかな気配りなどが写りの違いに現れるのではないかなと思っています。